道具のゆくえ
【 ウエア 】



@ ズボン

相棒とお揃いで買ったウールのクライミングパンツ。
当時山へ行く人は、誰も彼もウールのニッカボッカ。土木作業用とは余り似てはいませんが、どうも画一的で、如何にも山へ行ってきますと宣言しているようで厭でした。
その点このパンツは極、普通のストレートパンツ。チョット厚ぼったいのが気になりますが、冬場のビバークを考えると頼もしい一品でした。
引退後はスキーウエアに変身。 永いこと使っていましたが、いつしかウールの繊維が抜けてしまい部分的にペラペラになってしまい捨てられてしまいました。
今現在は、ポリエステルの厚手のビジネス用の古着を使っています。 別にウールに固執しなくても木綿でさえなければ冬でも充分使えます。

夏は伸縮性のGパン。 綿が含まれており濡れたときは鬱陶しいですがそこそこ乾きも早く、何より足の曲げ伸ばしが楽で結構アクロバティックな姿勢がとれ軽快でした。
ウエア一般に言える事ですが、内面登攀が多いと直ぐボロボロになってしまいます。特に、腰辺りの傷みが激しかったように思います。 ハイキング再開時は伸縮性のゴルフズボンをはいていました。 ゴルフはやりませんが普段着としてはいていた物です。化繊なので濡れても直ぐ乾き履き心地もそこそこOKでした。 これもあちこち擦り切れてきたので、今はかみさんが買ってくれた Earth Whole とかいうブランドの山用らしいズボンをはいています。伸縮性が有りぶかぶかで動き易いのですが濡れたらちっとも乾かない。山用というにはチョットお粗末です。
道具選びはメーカーの誇大広告に惑わされず、自分の山行形態にあわせ、自分自身の経験で確かめながら行うべきだと思います。失敗もしますが仲間内の情報が共有できれば少ない失敗で済みます。 そういう点からも、初心者は我を張らず山岳会に入った方が良いと思います。私の場合、今は共有情報源が有りませんが。


A 肌着

冬はウールが基本です。でも、今はどうか知りませんが昔のウールの肌着はすぐ背中がフェルト化してしまい、短く縮んでしまうのが普通でした。値段的にも高いものなので、簡単に買い替えなんて出来ません。そこで私は、極薄手のアクリルセーター(ニットと言った方が良いかも)を着ていました。濡れてもすぐ水分が抜けてしまい、ウールのようにフェルトにならず、いつも伸縮性があり肌をピタリと包んでいました。ウールはフェルト状になると、ゴワゴワして、肌との間に隙間ができ、また縮んで短くなると背中が出てしまい、余り暖かくなくなってしまいます。私の記憶では、アクリルニットのほうが耐久性もあり、暖かかったように思います。
そして今は、化繊の厚手の肌着を着ています。身体からの熱を遠赤外線にしてはね返す。というものや、水分(汗)を吸うと発熱するというものなど色々巷に溢れているようですが、どれも特に優れているとは思いません。綿さえ含まれていなければ皆同じように思います。
肌着1枚に何千円も出さなくてもマーケットで500円くらいで売っている化繊の肌着で充分です。(メーカーから営業妨害だと言われるかもしれませんが。)

夏も化繊のTシャツを着ていました。
汗をかいてもすぐ抜けてしまい、乾燥が速く爽やかです。
今はユニクロで買ったドライシャツなるものを着ていますが、これは最悪です。やはり綿を含んだものは夏冬関係なく山にはタブーです。化繊100%のTシャツがやはりベストですが最近は売ってないんですね。真剣に探して無いだけかも知れませんが。


B 上着

間の季節は釣用品店で買った化繊のシャツを着ています。
水抜けがとても速く、カヌー用に来ていたものです。今探してもこの手の物は置いて無いようなので大事にしています。
冬はユニクロで買ったポリエステル100%のカッターシャツを着ています。
同じ柄で値段の高い物と安い物が有り、安い方を買いました。高い方は綿90%でした。「世の中が高級志向になった為化繊100%が少なくなったのかな。」なんて思っています。


C 靴下

昔は必ず毛糸の靴下を履いていました。厚手の靴下というとこれしか無かったのです。
今は、アルペンでワゴンで売っている特売品のスキーソックスです。2足か3足で数百円の物です。勿論化繊100%です。デフレ万歳!



D 手袋

当時、山用品店では薄い革製のクライミンググローブなるものが売られていましたが、実際に使っている人は見たこと有りません。極たまに車の運転用の鹿革の手袋をしている人はいましたが。
殆どの人は軍手をしていました。直ぐ指先が擦り切れて穴があいてもそのまま使っていました。そう直に指で触る方が感触が良く解るからです。指紋が擦り切れると指先が硬くなりそれを過ぎるとまた元のように柔らかくなります。同じように柔らかくても初めの頃よりずっと強靭な指先になっているのです。 丁度ギターを始めた人が続けている内に指先に弦の跡がつきやがてそれが消えていくように。


E 合羽、ヤッケ

大昔はポンチョ。その次は内側ゴムびきの合羽。 このゴムびき、古くなるとゴムが剥がれてくるのです。
Hiking再開時凄いことになっており、一瞥しただけで不燃ゴミの袋へ直行。
今はアルペンで買ったダンロップの合羽を使っています。
この合羽にしてもヤッケにしてもズボンの方ってオーバーズボンのものは無いのかなあ。
靴を履いたままはくのだから、いちいち足を通すなんて面倒極まりない。
スキーウエアもそうですが、最近のものはオーバーズボンになったものが全く無い。昔はスキーのオーバーズボンをヤッケに使ったりしていたのですが・・・。
うちの子のスキーウエアもチームで一括して特注したのでオーバーズボンになっているが、標準のままだとそうじゃないんです。ワンピの上から簡単にはけるのはやはりオーバーズボンしかないでしょう。他のチームの人達はどうしているのだろう。
合羽、ヤッケ、スキーウエアはオーバーズボンが復活すると大きな市場になると思います。
もしスポーツウエアを扱っている人がこのページを見たのなら是非検討して頂きたい。


F スパッツ

引退前に使用していたのは、当時流行りだしたゴアテックス使用のスパッツ。
魔法のフィルムのように言われていたが、全体に濡れてしまうと、水の幕で覆われてしまい、結局通気性なんてゼロ! 用途、使い方、特性をしっかり把握した上で使わないと期待外れ。
やはり魔法の素材なんて無い。と確信した道具でした。
Hiking再開後も暫く使っていましたがいよいよボロボロになってきたので2シーズン前に今のものを買いました。
今のは下から足首くらいまでだけゴアのフィルムが貼ってあり、その上は貼ってありません。その方が通気性が良く快適です。 たったこれだけの事ですが、だてに20年過ぎた訳じゃ無いようです。

スパッツの下のゴム(靴底に廻してスパッツを留めるもの)ってよく切れます。細引きで留めたりしますが、タイヤチューブを20mm*200mm位に切り、両端に5mmφ位の穴を開けたものをいつも2枚ほど携行しています。これをゴムの代わりに使い、ホックに穴を引掛けて留めます。既に左側はこれと入替っています。


G 象足

今、部屋の中で履いています。
灯油 電力等のエナジーの節約、CO2エミッションの軽減、子孫に少しでも良い環境を残せるように、そして家計への協力と耐寒訓練?の為です。
今の人達はこんなものがある事すら知らないかもしれませんが、これは羽毛の入ったテントシューズです。 履くと羽毛の膨らみで象さんの足のようにモコモコになり、保温効果も抜群です。
冬の定着山行くらいしか使途の無いものですが、これが有るのと無いのとでは翌日の行動に大きな差が出ます。(足が温かいとぐっすり眠れます。)重くは無いのですがやはり嵩張るので短期入山では持ちたく有りません。

火の気の無い家の中でこんな物を履いている姿って普通の人から見ると滑稽でしょうね。
私、若い頃(当然独身)はよくこんな事してました。冬が近づくとベランダで寝袋にくるまって寝たり、真冬に部屋の中で寝袋から顔だけ出し、酒を口に運ぶ時だけ手を出す・・・なんてね。
人間の身体って訓練次第で結構いろんな環境に適応します。寒いからといって着込めば着込むほど、それに身体が慣れてしまい、きりが無くなってしまいます。
薄着でも厚着でも寒いものは寒いのです。その寒さの中で生命維持機能を継続させられるかどうかが問題です。必要量を食べ、自己発熱で体温を維持できれば死ぬことはありません。
凍死という言葉がありますが、これは疲労やショックにより生体機能に障害が起こった結果死に至るというものだそうです。寒くても食う物食って体力を温存して置けば大丈夫。寒いと感じるから身体が発熱しようと反応してくれるのです。
ちなみに冬山では風邪は引きませんビールスが生きていける環境ではないのです。ビールスさえいなけりゃ多少体力が落ちていても大丈夫。尤も風邪ひきさんが体内に保存したまま持ち込み暖かいテントの中で撒き散らしたんじゃペケですが。


H 羽毛のぱっち

【ぱっち】って何語なんですかねー。関西でよく聞く言葉ですが、ここ名古屋でも結構みんな使っていました。そう、標準語では股引と言うんでしょうね。
これ、親分から貰ったものです。本来はアンダーウエアらしいのですが、冬のビバーク山行には必ず持って行きズボンの上に穿いていました。横になれるような場所ならシュラフカバーにもぐり、さらにザックに足を突っ込む。寝袋を持たなくて良いという事は昼間の行動が楽ですごく大きなメリットです。
最近の寝袋は耐用外気温度の表示付きのものもあるようです。でもそれって何の役にたつの? どんなにばかでかい寝袋を持って行っても都会の家の中とは違うんだから寒いことは寒い。私の場合いたずらに荷を重くするより行動時の軽快さを選んでました。酒の勢いで早めにさっと寝て、2時頃には寒さで目覚めうつらうつら…。皆そうしてるんじゃないのかなあ。家と同じようにぐっすり寝ようなんて思う事自体間違っていると思います。どうしても我慢できないならブスを焚けば良いんだし。暖房(ブス)を入れると本当に気持ちよく眠れます。天候によっては酸欠注意の場合もありますが。

この【ぱっち】のおかげで登攀具一式含めても30L程度のザックに充分収まります。
それでも収まらなければ最終的にはエサを削れば良い。荷を軽くし行動を早く済ませるのが最も安全かつスマートな方法だと思います。


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