道具のゆくえ


【 寝袋 】

30年ほど前のものでゴールドフェザーというメーカーのもの。 ダウンと言ってもフェザーも入っているので別に変な名前ではない。 でもこのメーカー、今はもう無いだろう。
だいぶ前から外袋がほつれたり破れたり。 自らの手で縫い直して使っている。
これも雪のある時の定着合宿や縦走、ゲレンデスキーの雪中泊くらいしか使っていない。
無雪期やビバーク予定の山行は、シュラフカバーと羽毛服で済ませていた。
子供用に買った化繊の寝袋に囲まれて押入れで仲良く羽根を休めている。


カミサンの半シュラ

かみさんはいつも半シュラを携行していた。 最初から山行スタイルに関係なく、半シュラと羽毛服の組合せと割切っていたようです。
なるほど、その方が理に適ってると思います。(さすがに夏は定着以外はシュラフカバーだけだったようですが。)
理論的な割切りは立派なのですが、少々間抜けな所もあります。
いつだったか定着合宿で、テントが狭いので少し上に雪洞を堀りました。 私は雪洞組、かみさんはテント組。 テント内の酒盛りが厭でかみさんは雪洞に遊びにきました。 ダベリングしている間に夜は更け、帰る頃には雪面がクラストしてしまい「カチカチで降りれない。」
テントシューズのまま来てたんです。
寝袋も羽毛服もテントの中だし、「よし俺が取ってきてやろう。」なんていうやつは誰一人いないし・・・。
雪洞内はまだ暖かかったので、「いいや。 このまま寝ちゃお。」
夜半、ゴソゴソする気配に目覚める。「おい、何やってるんだ? ああ寒いのか。」 仕方が無いので寝袋ごとかみさんの両側から覆い被さってやる。 でも結局朝まで眠れなかったようです。

この半シュラもいつの間にか紛失してしまい、所在不明です。
どうも山へ行く連中というのは、私も含め自分のものと他人のものの区別がつかないようです。
人のものを借りて使っているうち、いつしか愛着が湧き、気がついたら自分の名前を書いてあったなんて事がよくあります。


自分の物は自分の物 人の物も自分の物 --- アイゼン

T君のアイゼンはタニ(このメーカーもまだあるのかな?)が初めて作った出っ歯のプレスアイゼンで、前部の前後を替える事で出っ歯になったり、10本歯仕様になったりするやつでした。
当時国産品は鍛造が主流だったので珍しさも手伝い、皆で交替で試し履きしました。 「岩が主体なら10本歯。」と言うのが当時の定説でしたが、 この出っ歯を履いた時のあの感動! 今でも覚えています。
前爪がバネのようにしなり、重心がずれてもしっかりスタンスに喰い付いているのです。 普通なら爪がずれて外れてしまうような場合でも。
また片側の前爪と両サイドの二番目の爪が岩面に接し、片足だけで3点支持になってしまうんです。 この素晴らしい安定感! これだけでグレードが一級上がるようでした。
いっぺんに気に入ってしまい、それ以来いつもT君から借りっぱなし。 さすがに引退後は返しましたが。

私のアイゼンはシャルレの10本歯。 まんまるになった爪を何度もやすりがけ。(グラインダーで) 前爪なんて5mmくらい短くなっている。
T君のを私物化していた時にSさん(私の人生の兄貴分 蔭に日向にいつも私を支えてくれた)に上げちゃったのですが、ハイキングを再開したころふとしたことからアイゼンの事が話題に上り、「使ってないから持っていけ。」 有難く頂いて帰り、それ以降冬場でもハイキングが可能になりました。 約20年間 Sさん宅に出向していたのであります。 そして今倉庫の中で出番を待っています。


自分の物は自分の物 人の物も自分の物 --- ドメゾンの羽毛服

あまり大きな声では言えませんが、実はこれ うちの会の親分のものなんです。
ドメゾンの羽毛服は当時最高級ブランドで私ごときが身に着けられるような代物ではありませんでした。当時の価格で5万円ほどしてました。
ちょっと嵩張りますが最上級の羽毛がたっぷり使われており、着ているだけで完全空調室の中にいるようでした。ご存知だと思いますが、羽毛製品は寒さを遮断するだけでなく、暑い時もそれを和らげてくれます。天然のエアコンといわれるゆえんです。
また、持っている事がステータスでもあり、これみよがしに着て見せてチョッピリ鼻が高かったのも事実です。
かれこれ25年以上借りたまんまになっています。 これってネコババ?
今度会うことがあったらお返ししましょ。


自分の物は自分の物 人の物も自分の物 --- 四つ折り断マット

これもまた大きな声では言えませんが、これはかつての相棒のものです。
いつのまにか私のザックの中に入ったままになっていました。
どうしてこうなったか、いきさつは覚えていません。ただ皆いいかげんで罪悪感も全く感じておらず、貸し借りはお互い様という感覚だったように思います。
常時入山していたからそれが当たり前のようになっていましたが、引退した時点で整理しておくべきだったのでしょう。その時はすぐ復帰するかもしれないなんて思っていたのかなあ。
これもまた、今度会うことがあったらお返ししましょ。


【 つるはし 】


カドタのウッドシャフト。
主に杖として使うタイプです。 当時はまだダブルアックスなんて技術はなく、このタイプが主流でした。
シャフトがウッドだったおかげでこのつるはしは難を逃れることができました。
難て何? 市内から郊外に引越し、庭ができてから家庭菜園をやるようになりました。
畑を耕すのに何か道具は? 有りました。山用のつるはしです。 私のはつるはしもバイルもウッドでヤワそうだったので専らかみさんのメタルシャフトが使われました。
おかげでピックはまんまるに。 見るも無残な姿をさらしています。さすがに可哀想だったのですぐに鍬を買いその後はお役御免。グラインダーで研げばまた使えるだろう。



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