道具のゆくえ
【 ブス 】



@ 大ブス

当時コンロといえばホエーブスが一般的で、他メーカーのものでもブスと呼んでる人もいました。
大所帯の定着合宿では大ブス(625)複数台、アタックや個人山行では小ブス(725)と使い分けていました。
私は会のものとは別に大ブスとプリムスの71Lを私物で持っていました。
この私物の大ブスは山行とは言えないようなハイキングやスキーでよく使用していました。
このころのコンロはすべて予熱が必要で、メタ(固形アルコール燃料)を使うのが普通でした。
でも吹きさらしの中でメタに火をつけるのはちょっと面倒でした。
ところが大ブスにはポンプが付いていて加圧して垂らしたガソリンで予熱ができ抜群の操作性を誇っていました。

乗鞍の畳平でテント泊、大ブスやコッファーを外に置いたまま出かけ、帰ってみると盗まれていました。
その頃の畳平はまだ車も少なく、観光地というより山の中という雰囲気でしたが、観光地化すると同時に治安も悪くなる事を思い知らされた出来事でした。

当時、春の乗鞍スカイライン開通後暫くは日曜日のみ信州側からの林道分岐が閉鎖され、ウイークデイは開放されていました。それで土曜日はこの林道を使い車をリフト替りにスキー三昧してました。
大黒岳と富士見岳の鞍部から位ヶ原山荘までひと滑り。一人が車で回収に。運転手を交替しながらリフト代OFFで皆で一日中楽しんだものです。
それも今年からは一般車通行禁止。我々の世代だけが甘い汁を吸ってきたようで、少々気が引けます。


A プリムス71L

これは青いブリキの箱に組み込まれた小型軽量のコンロです。
天蓋を開け、前扉を手前に開くと3面を風防で囲われたコンロの姿になります。この構造のおかげで耐風性は抜群でした。小ブスよりも風に強くまた箱と一体なのでパッキング性も優れていました。
難点は燃焼音の異常なほどの大きさでした。ゴーっというよりボコボコボコっと連続した爆発音のようで、他人の傍では使うのが憚られるほどでした。
でも一人でツェルトを被っているときなど、この音が大きな安心感を与えてくれます。
型番の確認の為、倉庫を探すと半分錆びた状態で埃にまみれていました。
まだ使えるのかな? 今度試してみましょ。


B 燃料

当時、燃料の白ガスは山の道具屋でしか入手できませんでした。
Sさん(私の兄貴分)は仕事でも使うためガソリンスタンドで18L缶単位で買っていたようですが、山だけではそんなに買っても保管に困るので割高承知でラスの1L缶を都度買うというパターンでした。
近頃はアウトドアブームのおかげでホームセンターでも格安の4L缶が売られています。良い時代になったものです。現在には現在のメリット、デメリットがあるように、昔には昔のメリット、デメリットがありました。当然の事ですね。

今はEPI(ガス)オンリーです。鈴鹿の冬くらいでは問題はありませんが、やはり風に弱く絶対的な信頼がおけるかと問われるとYesとは言い切れません。偏見かもしれませんがやはりガソリンの安心感には及びません。
ガスはたとえ寒冷地用でも残量が少なくなると火力が低下します。風が強いと炎が飛ばされちっともお湯が沸きません。
ガソリンは予熱もいるし気軽につけたり切ったりできませんが最後の一滴まで安定して燃えてくれます。


C コッファー

ブスといえば当然次に出てくるものはコッファー。普通皆さんコッフェルと言ってますよね。誰が使ってたのかこの言葉。気にもしていませんでしたが英語読みなんですかねえ。でもハーケンなんぞはピトンとかペグなんて呼ぶ人は誰もいなかったし、地域、会等でそれぞれ使う言葉がローカライズされて行ったのでしょうか。
個人用のはエバニューの一人用。アルミ製直径十数cm、深さも10cm弱とその中に納まる物の2枚組。インスタントラーメン1つがなんとか作れる程度の大きさ。
30年以上前のものですが、現在現役復帰しています。しっかり使い込まれて鍋底など油煙が焼付き真っ黒です。Hiking再開時に倉庫から探し出したときは、内鍋の鍋底とこすれて外鍋内側の底のアルマイトが一部剥げ、白い粉をふいていました。毎週これで沸かしたお湯を飲んでいますが、溶け出したアルミニウムの摂取でアルツハイマーがどんどん進行している事でしょう。
若い人達にはチタン製をお勧めします。少なくとも現時点では人体への影響は無いようですから。でも割れないかな? アルミは曲がるだけですみます。
これ以外に2-3人用もありますが、こちらは殆ど使っていません。サイズ的に中途半端だったようです。
合宿では共同装備の4-5人用が複数。個人装備として小学校の給食用アルマイト製食器を各人2枚、同じ大きさのものをそろえて持っていました。食料配分が不公平にならないようにとの理由からです。
話はそれますが、アルコールは共同食料と分けていました。女子、未成年は基本的には飲みませんから。
食べ物の恨みは恐ろしいといいますが、これだけ公平になるようにしていても、恨み辛みはいまでも耳にします。
海外遠征失敗の原因が食料問題にある。ともよく聞きます。


D プリムス71Lの現役復帰とEPIガスコンロ '04.05.08 追加

プリムス71Lは、現在現役復帰しています。(2月21日のHikingから)
20年以上ほったらかしだったにも拘らず、絶好調です。気温が低くても予熱さえ充分ならゴーゴーと青い炎を上げガスなどとても及ばない火力です。(ガゾリンの消費も速いですが)
給油栓兼圧力弁のパッキンが硬化してますが問題なく使えます。
手入れなど全くしていないのですが、トラブルが全く無いというのは信頼性が高く本番へも安心して持って行けます。
ホエーブス、プリムス等の古くからあるコンロは構造も簡単で故障が無い為永く使われていました。
アウトドア用品としてよく名の売れているコールマンや最近のガスコンロもそれなりに便利なんでしょうが、本番でのリスク回避を考えると、やはり昔ながらの物を選びたくなります。

EPIガスコンロ
引退する少し前くらいから山で使われ始めてました。私自身は使った事は有りませんでしたが、寒冷地用のボンベなら冬でも使えると聞いていました。
子供ができてからキャンプ用に買い、予熱不要なので重宝しました。
Hiking再開後はこれを持ち歩いていました。御在所程度でも冷え込んだ時は火力が落ちます。残量が少なくなると実用に耐えません。ですから冬場は残量が充分な内に新品に替え、少なくなったボンベは暖かくなってから使うようにしていました。
そして今年 1月24日のHikingでボンベがバーナーに着けられない事件が発生。
当初はボンベの不良と思っていたが交換してもらったボンベも着かず、ツェルトの中で漏れたガスが大爆発という失態を演じてしまった。
どうもバーナーのネジがバカになってしまったようだ。
Hiking再開から5年以上ほぼ毎週使ってきたので寿命と言えなくもないが、本番真っただ中でこうなるリスクを考えると絶対持って行かないだろう。(もう行く事もないが)

プリムス71L その後 '06.03.26 追加
3月11日のコクイ谷散歩時の事。
出合での大休止で久しぶりに71Lを使用。春の陽気で気温も高かった。風もそう強いとは思わなかった。この好条件で71Lの具合が悪い。炎が安定せずしょぼいのである。そしてそよ風程度でも炎が飛ばされ消えてしまうのである。やむなく半煮えの【どんべいてんぷらうどん】を頂く事になってしまった。絶対的な信頼を裏切られ少々ショック気味であった。これじゃあ安心して真冬に持ち歩く事が出来ない。利便性の高いガスバーナーを買うしかないのか。
予熱用のメタも今では小さなパックのものしか売っておらず、目の玉が飛び出すくらい高い。昔のパックの1/3〜1/4しか入ってなくて\800もするのである。燃料の白ガスはホームセンターで4L缶が\2,000.程。白ガスよりメタの方が高いなんて信じられない。ランニングコストから見てもガスの方が安いのである。絶対おかしい。
それで、3月25日に出かける前日、71Lの様子を見る事にした。毎度の事ながらギリギリにならなければ腰が上がらないのである。我ながら自分のグータラさに呆れてしまう。

風呂上りのパジャマ姿で作業開始。
ノズルの目詰まりの可能性が高いので、ノズルを外し台所のガスコンロで空焼きする。掃除棒でゴシゴシする。ノズルを取り付け、メタじゃなくガスコンロで予熱。点火すると片側半分だけ大きな炎が上がり半分はしょぼいまま。再度掃除棒でゴシゴシ。でも変わらない。
トーチ型のライターでバーナーのネックを加熱し再点火。
ゴーッという音と共にいつも通りの力強い炎が上がる。

これこれ、これですよ。これが本来の姿ですよ。
一応タンク内のガソリンを全部燃やし切る。その後満タンにして明日に備える。
メタを節約し過ぎて予熱不足だったのかなあ。炎がしょぼいと風にも弱くなる。メタでの予熱を止めてトーチライターで予熱してやろうかな。ライター用のブタンガスの方がメタよりずっとお廉いし。
結局はメタのケチり過ぎが原因だったようだ。これもメタに法外な値段をつけられた事が原因。
主要購買層の金余り中高年は高くても文句言わないからなあ。困ったもんです。ハイ。

ブス新調  '08.10.26 追加
数年前EPIのガスバーナーの調子が悪くなってから、昔使っていたプリムスのガソリンコンロ、71Lを持ち歩いていました。大昔のものにしては軽量コンパクトで重宝でした。
しかし所詮ガソリンコンロです。予熱が必要だしガソリンの補充も必要。(あたりまえの事ですね。)
おまけに炎の上に鍋などを置くと不完全燃焼するのか凄く眼に沁みます。今までは気にも留めていなかったのですが、人から指摘されそれ以来どうも気になるようになってしまいました。
そこで一念発起、清水の舞台から飛び降りる覚悟でガスバーナーを新調する事にしました。
Netで調べていたらプリムスのP-113という機種に行き当たりました。MFMMとかいう方法で風にも強く炎が垂直に立ち上がります。
昔人間の私には、聞いたことも無いようなメーカーのものよりホエーブス、プリムス、オプチマス、少々新しいところでコールマンなどの老舗メーカーのものの方がなんとなく安心感があります。それに今更ガソリンは無いでしょう。低温に多少弱くてもせいぜい鈴鹿、火力が弱けりゃトーチライターでボンベを炙ってやればよいし。そしてガスの最大のメリットは予熱不要ってところですね。予熱が面倒と言うよりメタのお値段がバカにならないのです。今売られているものは、昔の箱の1/5くらいの量で800円もします。ついつい予熱をケチりたくなっちゃいます。

早速Netで発注。本体5,350円、送料500円、合わせて5,850円と決して廉くはない買い物ですが、本体の重量が76gと超軽量なのも魅力でした。お年寄のtanuoさんには多少お高くても軽い物がお似合いです。軽量化により少しでも楽をしようという魂胆です。
ガスのボンベもひと回り小さなサイズもあるようです。そのボンベに家庭用カセットコンロからガスを充填する道具もあるそうです。無名メーカーのものなら3本198円で売っている事もあります。イワタニ純正品は安売りでも298円。それでも充分ランニングコストは抑えられますが、難点は寒冷地用でないこと。例え御在所でも冬場は使えないかもしれない。暖かい季節は火を焚く事もあまり無いので残念ながら実用的ではありません。
ただ小さいボンベは魅力です。今度ボンベを買う時は小さい方にしてみようかな?

真ん中の写真は火を絞った状態です。絞るのは難しく直ぐ消えてしまいます。そして点火電極辺りでは赤い炎になってしまいます。通常使用時は炎が垂直に40-50cmほど上がり、テント内では火事注意です。



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