孟子のお母さんほどではありませんが、子供にこうあってほしいと思うのは、どこの親も同じです。
T哉が幼い頃、優しいとでもいうのか気が弱いとでもいうのか、とても臆病な一面がありました。
人相手なら多少遠慮がちなところはあっても臆病と言うほどではありませんでしたが、犬を凄く恐がっていました。
自宅で犬を飼えば恐怖心も無くなるのでしょうが、その頃は県営住宅かマンション暮らし。動物を飼う事は出来ませんでした。
犬を飼うには戸建に移るしかない。これが今の家に引っ越した最大の理由です。そんな馬鹿なと思われる若い方々、自分がその立場になったら納得できると思います。子育てを終えた方々なら、在り得る話だと思われるでしょう。
孟母は教育のため居住環境を替えたのですが、家の場合そんな偉い人にするつもりなど毛頭なく、犬を恐がらないようになってほしい。ただそれだけでした。
そして犬嫌いを直すには、出来るだけ優しい性格の犬を飼う事。外見上威圧感のある大型犬と接していれば大抵の犬など恐くなくなるだろう。ってことで、雌のボルゾイにしました。
この子がまたでかい図体の癖に凄く気が小さくて、T哉が慣れるにはピッタリでした。
子犬のくせにでかいので、最初はおっかなびっくりでしたが吼えることも無くクンクンいいながら擦り寄ってくる犬に直ぐ慣れました。
育ち盛りの子供と同じペースで大きくなり、体感的には子供たちにとってずっと同じ大きさだったように思います。
おとなしくて甘ったれなのは良いのですが、自分の大きさに気づいていないようで、尻尾を振って寄ってくると鞭のような尻尾で引っ叩かれ子供達には結構痛いのです。また広い所で放してやると大喜びで走り回り勢い余って子供に激突。3mほど吹っ飛んだ事もあります。そして凄い剣幕でT哉に叱られぶん殴られていました。殴られても子供の腕力、ポリー(犬の名前)にとってはそう痛いものでもなかったのでしょう。申し訳なさそうに寝っ転がって腹を出していました。
子供達の格好の遊び相手、私の散歩相手(でかすぎて子供では散歩相手が務まりませんでした。)だったポリーも寒いロシアの犬。夏の暑さに耐えかねたのか6歳という短命に終わってしまいました。子供達もまだ小6と小5。この年頃で身近で死というものを感じられたのは、悲しい事であると同時に必然的なものであることも悟った事と思います。だからこそ生の重みも感じ取れた事と思います。
あれからもう十数年が経ち子供達も既にこの家には居ません。
この家ももう子供達への役割を終え、年寄りが雨露を凌ぐだけの場所になってしまいました。年寄りだけには少し広すぎます。もう一遷して僕三遷とするか。
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