くりび出す


20050324

「あんな不細工な車買って! フェンダーがくりび出してるじゃないの。」
いまだにかみさんはハチ公(RX-8)がお気に召さないらしい。
くりび出すという言葉は我家でしか通じない方言である。
T哉が言葉を覚え始めた頃使っていた言葉だ。親達も面白がって使っているうち我家で市民権を得てしまったようだ。

当時私達は県営住宅に住んでいたが、着飾らない、心に垣根のない人達に囲まれてとても居心地の良い生活を送っていた。そして近所の子供達もよく家に遊びに来てくれた。お兄ちゃんお姉ちゃん達に可愛がられ、T哉もS司も幼少期にとても幸せな時をすごせた事と思う。
下心がある訳でもなく、ただ単純に幼い子が可愛いからというだけで何かと世話をやいてくれた。
少子化、核家族化などと言われている時期にあってそれらとは全く異なる幼少期を過ごせたのは、子供達の性格形成の上でも本当に運が良かったとしか言いようがない。

やはり人は群れで育ちあうもの。幼い者の世話をやく事により、やいた側も心が豊かになれる。
皆、生活が豊かな訳でもないのに、自分が使っていたおもちゃ、絵本などを惜しげもなく家の子に与えてくれた。
その中にMR-2のチョロQがあり、リヤタイヤがオーバーフェンダーからはみ出していた。その様子をT哉は「くりび出しとる。」と言っていた。お兄ちゃん達の使う言葉を間違えて覚えたのだろうが、親が喜んで同じように言うものだから、それが本当の言葉と思い込んでしまったようだ。
以来くりび出してるはしっかりと我家の標準語に納まってしまった。

としえちゃん達どうしているだろう。きっと良い人とめぐり会って、良いお父さんお母さんになっている事だろう。幼い時に年下の者を愛しむ喜びを覚えた人達はより豊かな感性で自分の子供を愛しんでいる事だろう。

かみさんのお気に召さないハチ公は、3月末登録の4月上旬納車との事である。
まるビ学生の分際で生意気過ぎる車を買って、周りの人の妬みを受けねば良いが…(こんな事を考えるのも団塊世代のせいかいな。)
旧人類のかみさんはまだブツブツ言っている。「本当は車なんて就職してから貯金して買う方が良いのにね。」それも一理。しかしそれが全てという訳でもない。親として僕が甘すぎるのかなあ。でも今まで我がままを言った事もないし、周りに気ばかり使ってきた子だからこれぐらいしてやっても良いんじゃないかな。返済プランも立てているようだし、計画立案の練習にもなるじゃないか。
この慎み深い性格は、幼い頃近所のお姉ちゃんお兄ちゃんから与えられた愛情から来ているのかもしれない。

としえちゃん達、本当にありがとう。


2005年03月24日


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