言語


20050303

下の子がまだ中学生の頃だから、もう7-8年前になるでしょうか。とても面白い本と出会った事があります。
題名は【フーリエの冒険】。内容は物理や数学でよくお目にかかるフーリエ変換、展開についてです。波、振動の解析によく使われるものです。

注釈:
どんなに複雑な形の波もいろいろな周期、振幅の波が重なってできており、個々の波に分解したり、逆に個々の波を重ね合わせて複雑な形の波を合成したりできます。

一言で言えば上記注釈の通りなのですが、数学的には三角関数やマクローリン関数を使って証明します。

人とコミュニケーションをとる時、一般的には言語を音波という媒体で相手に伝えます。その音波をグラフに現すととても複雑な形をしています。しかし【ア】と言う音声、【イ】という音声みな決まった波形の繰り返しとなっています。その波形が人の耳には【ア】とか【イ】とかに聞こえるのです。
そこでこの「音波あるいは波というものを数式という一種の言語で表してみよう。」というのが事の発端のようです。

刊行したのはヒッポファミリークラブ。
ヒッポ…とは多言語を介して、人々とのコミュニケーションを図ろうとしている非営利団体で、各地に拠点を持ち、地域の人と海外から来ている人達が交流を深める。といった活動をしているようです。
同メンバーの中で数学や物理に詳しい人達が中心となり全く数学と縁の無い人達も数学をひとつの言語として勉強会を続けその結果を本にしたもののようです。
印刷屋さんに植字してもらったのではなく、ドットがまる解りの品位の低いワープロ文字で作られた本です。いかにも手作り!といった感じですがそれがまた味わい深いものになっています。
本屋さんでひとめ見るなり気に入ってしまい、「是非子供達に読ませてやろう。」と買って帰ったという次第です。

およそ今の学校の教科書というものは、簡単な事でもわざと難しく説明しています。解り易く書くと自分の権威が地に落ちるとでも思っているようです。逆に外国の書物は理解し易いように優しい言葉を選んで解説しています。
たかが著者の権威などよりも、一人でも多くの人に一般的な知識を理解してもらった方が、裾野が広がり次代を担う学生たちにとっては良い事だと思うのですが…。
あるいは著者自身理解できていないのかもしれません。

そんなしょうも無い文部省認定の教科書よりも、この本はずっと出来の良い教科書だと思います。
(そう言えばこの本、豊田高専の推薦図書に選ばれていたようです。やはり見る目のある先生もいらっしゃるんですね。)

数式を言語として見るようになれば、やれ文科系だ理科系だなんて分類も無くなるかもしれません。
ソフトウェアの開発も理科系より文科系の人のほうが適正がある。と言っている人もいます。ソフトウェア言語の方が数式より言語らしさが強いのであながち変な論理ではないように思えます。

T哉も少し前、学校でフーリエをやったらしい。あの本の予備知識のおかげで何の抵抗もなく授業を受けられたそうだ。教科書をみたらやっぱり僕が学んだ頃のような堅苦しい内容である。
それに教科書には最も重要な説明が抜けている。冒頭の注釈や、何の為にそれを使うのか、それがどんな利益をもたらすのか。今の教科書全てこれらの説明が無い。それを先生が口頭ででも話してくれれば良いが…。

理科離れを愁うる前にまずテキストを見直すべきではないか。


2005年03月03日


Weekly Hike Top Page へ